脊椎外科では、脊椎変性疾患(せぼねの老化による病気)に対して、脊椎内視鏡を用いて背中(後方)から神経除圧を行う手術(脊椎内視鏡手術)を行っており。脊椎内視鏡手術は、傷が小さく(1円玉ほど)身体への負担が少ないため、術後の回復が早く元の生活に早く戻ることができます。輸血は不要で術後コルセットも不要であり、経過が良好であれば手術後5日程度で退院可能となります。全身麻酔をかけることができれば、特に年齢制限もなく行うことができます。手足のしびれ・坐骨神経痛・腰痛・肩こり・背部痛・歩行障害などでお困りの患者さんで、お近くの整形外科やペインクリニックなどで保存加療を受けているが症状が改善しない場合は、当科を受診してお気軽にご相談ください。
せぼねの中に神経の通り道(脊柱管および椎間孔)があり、せぼねの老化により神経の通り道が狭くなっていきます(脊椎変性)。脊椎変性が進行すると脊髄・馬尾・神経根を圧迫するようになり、圧迫が進行すると神経の血流が悪くなるため様々な神経症状を呈するようになります。自覚症状が軽度であるからと言って放置すれば、長年の積み重ねによって神経麻痺をきたして寝たきりなったり、膀胱直腸障害をきたして排尿排便困難となる場合もあります。超高齢化社会となっているわが国では、このような脊椎変性疾患は脊椎脊髄病の約9割を占めています。
下記のような脊椎変性疾患が手術適応となります。
1)腰椎疾患:椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、椎間孔部狭窄症、変性すべり症、
分離すべり症、脊柱管内嚢腫病変(椎間関節嚢腫、椎間板嚢腫など)、
変性側弯症、Failed back surgery(腰椎多数回手術後)など
脊椎変性疾患の約75%に該当します。
2)頚椎疾患:椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、頚髄症、黄色靱帯石灰化症 など
脊椎変性疾患の約25%に該当します。
3)胸椎疾患:椎間板ヘルニア、黄色靱帯骨化症、円錐上部症候群、胸髄症 など
脊椎変性疾患の約5%に該当します。
注)脊髄・馬尾・神経根が画像上神経圧迫を認めても無症状の場合も多々あり、その場合は手術適応とはなりません。
●脊椎内視鏡手術の適応外となる疾患(脊椎固定術の適応となります)
- ◇脊柱靱帯骨化症:後縦靭帯骨化症
- ◇脊椎外傷:頚椎脱臼骨折、胸腰椎破裂骨折など
- ◇脊髄損傷:不安定性椎体骨折、髄内出血など
- ◇脊椎感染症:化膿性椎間板炎など
- ◇脊椎腫瘍・脊髄腫瘍:椎体巨細胞腫、神経鞘腫など
- ◇脊椎椎体圧迫骨折:骨粗鬆症、椎体腫瘍など
- ◇脊柱側弯症・後弯症:思春期側弯症、変性側弯症など
- ◇その他:リウマチ性脊椎炎、透析性脊椎症など
1) 下肢の症状
☆腰・臀部(おしり)~大腿(太もも)・下腿(ふくらはぎ)・足の指にかけてしびれや痛みが出現
し、日常生活が困難となってきた。
☆長く立っていたり歩いていくと、下肢がだるくなってくる・しびれがでてくる・足が前に出なくな
ってくるなどの症状が出現し、しゃがみこむあるいは前かがみの姿勢で少し休むとまた歩けるよう
になる(間欠性跛行:かんけつせいはこう)という症状を認める。
☆腰をそったり、上を向いて寝ていると、臀部から足にかけて電気が走るような痛みが出現してくる
ようになった。あるいは、横向きでないと寝ることができなくなってきた。
☆長く歩いていくとつまづいてこけそうになったり、膝の力が抜けて歩けなくなってくるのだが、腰
を曲げて歩くと長く歩ける。
2)上肢の症状
☆首(頚椎)から腕や指先にかけてしびれや痛みが出現して、日常生活が一部困難となってきた。
☆箸使い・ボタンはめ・書字等(巧緻運動障害:こうちうんどうしょうがい)しづらくなってきた。
☆歩いていくと膝がガクッと力が抜けたり、足先がよくつまづいてこけそうになったりしてきた。
☆階段は手すりを使えば登れるが、降りるのがスムースに降りれずに怖くなってきた。
☆空を見上げたり、うがいをした時などに、首から腕や手の指あるいは背中全体に電気が走るような
痛みがでてきた。
☆手に持ったものを容易に落とすようになったり、腕や足に力が入りづらくなってきた。
☆上を向いて横になると、上肢に痛みやしびれが出現して寝ることができなくなってきた。
☆午前中は調子良いが、午後から夕方になってくると腰や下肢が重だるくなってくる。
※腰痛や肩こりのみで上肢や下肢にしびれや痛みがない場合には、脊椎内視鏡手術の適応とはなりません。
※長く立っていたり歩いていくと出現してくるしびれは手術後には軽快しますが、安静時(寝ていたり座っていて感じるもの)にしびれがある場合は、手術をしてもよくなるかどうかはわかりません。特に1年以上前から安静時のしびれを自覚している場合には、手術をしてもしびれは改善せずに遺残してしまいます。
※安静時のしびれを自覚したら、できるだけ早期の手術をお勧めします。
診察は、火曜日の午前で予約制で、脊椎専門外来を行っております。予約なしで来院された場合は、お待ちいただければ診察させていただきます。なお、確定診断を行うのに診察及び画像検査(レントゲン・MRI・CTなど)が必要です。お近くで撮影された画像検査があれば、来院時に持参していただければスムースに診察をすすめることができます。
術後経過が良好な場合、下記のような入院経過となります。
1日目:手術前日に入院(入院後にオリエンテーションがあります。)
2日目:午後から全身麻酔で手術を施行(朝から絶食となります。)帰室後から自己体交可能
手術後3時間で麻酔が覚醒すれば独歩可能(翌朝まで点滴ルートを留置します。)
3日目:椎間板ヘルニアや頚椎症の場合は、ドレーン抜去します。
4日目:上記以外の手術患者さんドレーン抜去します。
経過が良好であれば手術後5日程度で退院可能です。
注)入院期間は、術後経過で延長となる場合があります。
また、手術前に神経麻痺が強い患者さんは、術後リハビリを追加して入院も延長となります。
・退院時には、創部に防水テープを貼って帰宅していただきますが、傷口は完全に治ったわけではありません。シャワー浴はOKですが、テープ部位をごしごしとこすらないようにしてください。
・退院後1週間たてば、ご自分でテープをはがしてもらいますが、その日もシャワー浴にしてください。テープをはがした翌日から、傷口に問題がなければ入浴していただいて結構です。
・帰宅後に問題がなければ、次回の再診は1カ月先で結構です。傷口の確認にこれるようであれば、退院後1週間目に再診してください。
・帰宅後から自転車や自動車などに乗っていただいてもかまいませんが、汗をかいたり体がつかれたりしないようにしてください。帰宅後から大事なことは、傷口が早く治ることと、できるだけ安静はとらずにもとの生活にもどしていくように努めてください。
・椎間板ヘルニアの場合は、断裂した椎間板が治癒するのに術後6週間(術後1か月半)かかります。それまでは、中腰をとったり、20Kg以上の重いものを持ったり、飛んだり跳ねたり、いきんだりしますと、ヘルニアが早期再発する可能性が高まりますので、地面のものを拾うときなどは膝をまげて腰をぐんとまげないように注意してください。コルセットをまく必要はありません。なお、術後6週立てば、それらもしていただけるようになり、スポーツ復帰も可能となります。
・椎間板ヘルニア以外の方は、術後3週ほどで深部の傷も治癒しますので、術後3週までは体に負担がかかる動作は避けておいてください。術後3週以降は、少しづつ禁止していたことも再開していただき、スポーツなども復帰していただいて結構です。
・術後経過が良好であれば3カ月目にMRIなどを再検し、問題なければ治癒として治療を終了いたします。
・退院後に、何か問題があれば予約なしに再診していただいても結構です。