胆石症とは、胆道(胆嚢、胆管)の中に石ができる病気です。胆石が存在するだけでは症状がないこともありますが、胆石が胆嚢管という胆嚢の出口を閉塞してしまい、胆嚢炎をくり返し起こすことがあります。胆石だけを摘出すると胆石が高率に再発するため、手術は胆嚢を切り取る『胆嚢摘出術』が行われます。
胆嚢は、消化液の一つである胆汁を貯留しておく働きがあり、切除してもほとんどの方が食事制限の必要もなく、日常生活も術前とまったく変わりなく過ごすことができます。下痢を起こしやすくなる人がいますが、数ヶ月で軽快することが多いです。
画像診断により胆石症と診断しますが、画像診断には限界があるため、摘出した胆嚢を病理検査[顕微鏡の検査]に提出しています。胆石症の100人に1人は胆嚢癌を合併しており、手術後の検査により癌が見つかった場合、再手術が必要となる場合があります。また、手術中に癌などが疑われた場合には、その場で胆嚢の一部を病理検査に送り、迅速診断を行います。結果によっては癌に準じた開腹の手術となる場合があります。
また、術後の病理検査で癌が判明した場合には、後日、追加手術となる場合があります。
胆嚢結石症に対しては『腹腔鏡下胆嚢摘出術』が標準術式です。
『腹腔鏡下胆嚢摘出術』とは、お腹に4ヵ所の穴(通常、臍に12mm、みぞおちとお腹の右上に2ヵ所それぞれ3~5mmの穴)を開け、そこから炭酸ガスを入れてお腹を膨らませ、腹腔鏡という細長いカメラやハサミなどを挿入し、胆嚢を摘出してくる方法です。
腹腔鏡手術の利点は、傷が小さく、手術後の痛みが少なく、回復が早いことです。
しかし、癒着のひどい場合や、胆嚢の炎症や萎縮・肥厚などがある場合には行えないことがありす。また、テレビモニターでうつし出された映像をみて手術を行いますので、視野が狭く、立体的に見えないため、胆管や十二指腸などの腸管を損傷する頻度が、開腹手術に比べて高くなります。お腹の中の癒着や胆のう炎、止血できない出血、胆管損傷をきたした場合などには、従来の開腹手術に変更することもあります。胆管損傷では、胆管と腸管をつなぐ手術となることもあります。術後の合併症により再手術・再開腹手術が必要となる場合もまれにあります。手術時間は2時間前後で、麻酔の時間を入れると、病棟の部屋に戻るまでは約3時間となります。ただし、胆嚢炎が強い場合や癒着のある場合には手術時間は長くなります。